この本を読むまで、絵本は子どものものだと思い込んでいました。
『おこだでませんように』くすのき しげのり・作/石井聖岳・絵

家でも学校でも怒られている小学一年生の男の子のお話です。
仕事で帰りが遅いおかあさんを待ちながら妹と遊んでやるけど、妹はわがままを言っては泣き、男の子がおかあさんに怒られます。学校でも先生からしょっちゅう怒られます。
7月7日に、彼は学校で七夕のお願いを書くことになります。一生懸命どんなお願いにしようか考えていると、また「はよう書きなさい」と先生から怒られました。
そんな彼が書いたおねがいは……。
これを読んだとき、ぼろぼろと大泣きしてしまいました。
ワンオペ育児できりきりまいだった当時の自分と息子が、この絵本のおかあさんと男の子に重なったのです。
絵本の中にはおかあさんと男の子、妹が3人で写っている写真が飾られている背景があります。シングルマザーなのかもしれません。家事と仕事、育児でてんてこまいの毎日でしょう。
そして男の子は自分がしょっちゅう怒られることをわかっていて、理由を話すのも「もっと怒られるに違いない」と諦めている。
自分が怒られなければおかあさんはもっと綺麗でいられるし、先生も笑顔でいてくれるのにと思いつめている。
でも、どうしたら怒られないのかわからない。
そして短冊に書いたお願いごとが、周りの大人たちに気づきを与えるのです。
息が詰まりそうなほど忙しく、余裕がないとき、私はこの絵本を開きます。そして息子たちを抱きしめます。
この絵本を幼い頃に読んだ子どもたちは、きっと子育てするようになって我が子に読み聞かせるときに昔とまた違うものを感じ取ると思うのです。
時を経て、あの頃とは違う輝きをみつける。それこそが本の醍醐味のひとつであり、この本もまたその輝きにあふれています。

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