【読書レビュー】『営繕かるかや怪異譚』小野不由美著

読書の記録

この本には魔力がある、と思った作品。

『営繕かるかや怪異譚』小野不由美著

ホラーの類が苦手な私がなんとなく書店で手に取り、怖い怖いと思うのにあっという間に読み終えてしまいました。

小野不由美さんの文章はするすると入ってきて、こちらの感覚を支配してしまう気がします。目の前に映像が浮かぶだけでなく、においや音、湿度といった五感をフルに揺さぶり、気がつけば物語にのまれる。この引力こそ本の魔力だと思います。

小説は連作短編になっています。あちこちで起きた怪異の最中に『営繕かるかや』こと尾端という男がふらりと現れ、物事をおさめるのです。

それは怪異を祓うとか退治するというものではなく、死んだ人間と『折り合いをつける』というのがしっくりくるように思います。

私たちの実生活でも苦手な人、怖い人、嫌いな人と距離を置いたり流したりして折り合いをつけることがあります。相手を変えようとかこらしめよう、改心させようとはせず、適度な距離感や過ごし方を模索する。そんな形に似ています。

人と人とのご縁、付き合い方、共存の仕方というのは、生きていても亡くなっていても同じなのだと思い知らされます。

雨の夜におすすめの本です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました